コラム

読書メモ7 争点整理の手法と実践 森宏司/中本敏嗣/小野憲一/森純子[編]/民事法研究会 2021年7月4日第1刷発行/使途不明金事案

現在、実務の第一線で活躍している裁判官たちが執筆した本です。

「第4章 相続関係訴訟における争点整理」のなかに、

「第2 相続に絡む横領事案における争点整理」という項目があり、

いわゆる使途不明金に関する訴訟の戦い方として参考になります。

参考になった点は、以下のとおりです。

・ この類型の事案では、事実関係を被告が把握している場合がほとんどであり、

裁判所は、被告に対して主張立証を促す必要がある。

そのとき、裁判官が判決書を自ら書き上げた経験こそが有益といえる。

ただし、それぞれの事件には個性があり、後で振返ってみると、

釈明を求めた事項やその時期などに関して適切ではなかったこともある。

→ これは、原告代理人の立場からすると興味深い記載で、

争点整理手続きにおいては、釈明の必要性を積極的に説明したり、

事実関係について積極的に裁判官の誤解を正したりしていく必要性を感じます。

・ 民法906条の2(みなし遺産)が新設され、

遺産分割前の共同相続人による遺産の処分については、

当該処分をした共同相続人の同意を得ることなく、

他の共同相続人の同意によって遺産に存在するものとみなして

遺産分割を進めることが可能になったから、

被相続人の生前と死後の出金を区別する意義は、

従前に比べて大きくなったといえる。

→ 原告代理人としては、死後の出金に関し、生前の出金と明確に区別するとともに、

不法行為構成でいくのとみなし遺産確認構成でいくのと、どちらが依頼者にとって有利になるか

吟味する必要があると思います。

・ 生前の出金400万円を改装工事費用にあてたという主張が被告からなされた場合、

被告が金銭管理を委託されていたとしても、金額が高額であることから、

被相続人から具体的な承諾を得るのが自然なようにも思われる(229ページ)。

→ 原告代理人としては、反論に使える考え方です。