コラム

Q&A① 父が亡くなった後、遺産であるNTT株式の配当金が発生しています。この配当金はきょうだい3人で当然に分けることになりますか?

当然に分けるのではなく、遺産分割の対象になる可能性があります。

大阪地裁令7.3.14判決(判例タイムズNo1546・201頁)を参考に、福岡相続に注力する弁護士が解説します。

Q

父が亡くなった後、遺産であるNTT株式配当金が発生しています。

この配当金は遺産分割の対象ではなく、きょうだい3人で当然分割になりますよね?

A

当然分割ではなく、遺産分割の対象になる可能性があります。

(解説)

大阪地裁令7.3.14判決(判例タイムズNo1546・201頁)は、

共同相続された株式につき相続開始後に配当金支払請求権が発生した場合、

当該債権は当然に相続分に応じて分割されることはなく

共同相続人の一部が発行会社等に対し、

自己の相続分に相当する金員の支払いを請求することはできないと判断しました。

これはともすれば従来の実務の取扱いに真っ向から反するものであり、話題になっています。

これまでの議論を整理します。

金銭債権→当然分割(最一小判昭29.4.8)。可分だから。

現金→遺産分割の対象(最判平4.4.10)。当然分割ではない。金額調整に使うから。

預貯金→遺産分割の対象(最判平28.12.19)。当然分割ではない。金額調整に使うから。

株式→遺産分割の対象(最一小判昭45.1.22)。当然分割ではない。共同相続人の準共有であり可分でないから。

賃料債権→当然分割(最一小判平17.9.8)。可分だから。

委託者指図型投資信託の受益権から発生した収益分配金→遺産分割の対象(最二小判平26.12.12)。内容・性質が可分でないから。

このような状況のもと、大阪地裁令7.3.14判決は、

株式の配当金→遺産分割の対象、と判断しました。

理由は、内容・性質が可分でないから、というものと思われます。

どちらかといえば、上記の「委託者指図型投資信託の受益権から発生した収益分配金」
(最二小判平26.12.12)の扱いにひきつけて判断しているものと思われます。

しかし、このような取扱いは、現在の実務上の取扱いに真っ向から反します。

現在の実務上は配当金は当然分割です。

どちらかといえば、現在の実務上は、上記の「賃料債権」(最一小判平17.9.8)
の扱いにひきつけて取り扱われています。

では、株式の配当金は、「委託者指図型投資信託の受益権から発生した収益分配金」と、
賃料債権」のどちらに近いのでしょうか?

賃料債権」は、遺産(土地建物)とは別個独立して発生する法定果実の典型です。

これに対し、「委託者指図型投資信託の受益権から発生した収益分配金」は、

遺産(受益権)とは別個独立して発生するというようりかは、
遺産と不可分な遺産そのものなのではないか、
なぜなら受益権というものがそもそも収益分配金を目的とするものだから、
という指摘があります。

つまり、「賃料債権」 → 土地建物がたまたま果実を生んだ

収益分配金」 → 受益権がその目的にしたがって分配金を生んだだけ 

というわけです。

では、ひるがえって、「配当金」はどうか?

配当金 → 会社の経営に参加する権利である株式がたまたま果実を生んだと考えるのか、

配当金 → 会社の経営に参加する権利であり、

      かつ配当金を受け取る権利でもある株式がその目的にしたがって配当金を生んだと考えるのか?

大阪地裁令7.3.14判決は、控訴されておらず、確定しているようです。

下級審裁判例にすぎませんので、まだ、実務にどのような影響が出るかわかりません。

現時点では、配当金は遺産分割の対象になる可能性があることを念頭において、

遺産分割に臨む必要があると思います(弁護士原口圭介)。