コラム

読書メモ 「遺言能力(遺言能力の理論的検討及びその判断・審理方法)」 土井 文美 大阪高等裁判所判事 判例タイムズNo.1423 2016.6 

遺言能力について書かれた論文です。

遺言能力は、

医学的判断を尊重しつつ、

②最終的には裁判所が法的判断(遺言作成時の状況、遺言内容の難易、遺言内容の合理性、動機の有無などの諸要素)

を行うべきと書かれています(25頁)。

その判断方法自体は、どの書籍をみても書いてありますが、

この論文は、①医学的判断の分析が豊富で素晴らしいと思いました。

たとえば、

・ 精神疾患が認知症の場合でも、アルツハイマー型なのか血管性型なのか、などによって、

常時判断能力が失われていたのかの判断に影響し、ひいては、遺言能力の判断に影響するから、

その種類をできるだけ明らかにするのが有用

・ 異常な言動があったとして、それが周辺症状なのか中核症状なのか、

また、初期症状なのか後期症状なのか、などによって、

その時点でどの程度判断能力が失われていたのかの判断に影響し、ひいては、遺言能力の判断に影響するから、

これらの点もできるだけ明らかにするのが有用

などです(43頁)、

この医学的判断の分析は、実際の遺産相続案件で、とても役に立つと思いました。